変なガジェットが触りたいと言っていたら、変なガジェットがやってきました。世代が古いChromebookです。具体的にはAndroidアプリが動かないやつ。今はG5まで行ってるっぽいので、だいぶ古めです(2013年9月発売)。たぶん日本未発売。色はGoogleカラーの4色があるのですが、Blueです。
CPUにSamsung Exynos 5250というArm Cortex A11ベースのプロセッサを積んでいるので、Intel insideなChromebookとはちょっと事情が異なるようですが、ほかは11.6インチのIPS LCDで英字キーボードなので、非常にスタンダードなChromebookですね。
HDMIやUSB 3.0端子の付いたChromebookが多い中、そういう拡張性をすべて切り捨てた潔さは好みです。充電端子がmicroUSBで、ふつうのmicroUSBケーブルで充電できるのはとてもよいと思いました。パココンもこうなってほしい。
同じ11インチのカテゴリとはいえ、VAIO Xとは一回り大きさが異なります。大きさ重さとしてはMacBook Air 11ですね。ファンレスでほとんど発熱もしない本機は、内蔵バッテリーで実働6時間くらい動きます。これはほぼスペックどおりの数値で、公称どおりの数値が出るのは珍しいしすごい。
キーボードもスタンダードな配列と余裕のあるキーピッチで、底突き感もほとんどないのでわりと文章も打てます(これもChromebookで書いています)。ごろ寝しながらフルスペックのWebを見つつだらだらと文章を書くという、怠惰の極みみたいなことが高次に実現できるというのがこの端末の素晴らしいところだと思います。これが当時300USDもしなかったのだから、よい時代になりましたね。
画面表示はとても綺麗なのですが、Notoフォントなので現在のAndroidと比べると1段落ちる感じの文字表示です。オフラインでも動くGoogle日本語入力は、クラウド版となるPC版と比べて変な学習がなくてスタンダードな日本語変換ができます。
ctrlとaltキーを入れ替えたりも設定でできます。Windows使いにもMac使いにも優しい。Google日本語入力も設定からATOKライクのキーバインドにするとかできて、およそ普段使いで困ることはないんじゃないでしょうか。
よくない点としては、Bluetoothテザリングに接続できない点ですかね。プロファイルがないようでうまくぶら下がれない。いちいちWi-Fiテザリングを起動するのもだるいので、電話機に触らずテザリングにぶら下げられるBluetoothテザリングは便利なんだけども……
VAIO XやVAIO Proみたいな11インチモバイルのお手本のようなPCと比較し始めるときりがないけど、インターネットに接続できる環境なのであればChromebookを持ち歩く理由は充分にあると思いました。Chrome拡張のおかげでブラウザの中でかなり完結できるし、そのブラウザがフル機能版なのでChromeアプリを組み合わせるとかなりできることの幅が広がる。
巨大なファイルをダウンロードしてUSBメモリに入れるとか、PCと同じことをちゃんとできるのはスマートフォンにはないところだし、20GBくらいのMPEG4を食わせてもチャプター付きで正しく再生されるので、メディアプレイヤーとしても結構優秀。飛行機の中で時間潰すくらいならできますね。
ちゃんと動いてくれればOSにもブラウザにもそれほどこだわりはないので、それらが一体でちゃんと動いてくれるChromebookはわりと気に入りました。もうちょっと小さくて軽いと文句ないですね。ctrl-alt-TキーでPC-*NIX系のシェルも動くし、コマンド操作が魂に刻み込まれた我々のような世代にも安心。
スタンダードノートをノンスタンダードで使う
Chromebookには開発者向けのモードがあって、自己責任で他のOSを入れたりすることができます。とはいえ、Arm向けのWindowsなどが動けばいいなとは思いますがそういうわけではなく、UbuntuやDebianなどのLinuxディストリビューションがメインのラインアップとなります。
Chrome OS上で他のOSを動かすものと、ROMごと入れ替えてしまうものがありますが、今回は前者の方法を紹介します。
croutonでDebianを入れてみよう
croutonをざっくり説明すると、Chrome OSの上で他のOSを動作させるための仮想化ツールです。Chrome OSのウィンドウとしてLinuxが動作するようになるので、Chrome OSで足りないなと思ったことを補完できるようになります。そう、たまに補完が必要だなと思う程度にはChrome OSはわりとメインで使えるOSだと思います。
リカバリメディアの作成と開発者モードへの移行
事前にリカバリメディアを作っておくとよいと思います。4GB程度のUSBメモリなどがあるとよいでしょう。リカバリメディアはChrome ウェブストアから『Chromebook リカバリユーティリティ』をダウンロードすることで作成できます。
esc-reflesh-powerキーで電源を入れると、Chromebookのリカバリモードが起動します。ここでctrl-Dを押してenterキーで開発者モードへ移行する準備が開始されます。全部で10分ほどかかります。本体データは全部消えますが、だいたい全部クラウドにあるわけなので特に問題はないでしょう。
開発者モードへの移行が完了すると、リカバリ画面へ戻ります。ここでctrl-Dを押せば、買って最初のときと同じ初期設定画面が表示されます。この時点では何も変更していないので、初期化された状態と同じわけですね。
croutonの導入
Chromeで以下のURLからcrouton integration拡張を導入します。
その後、以下のURLからcroutonのシェルスクリプトをダウンロードします。
Chromeのウィンドウでctrl-alt-Tを押すとChrome OSのシェル(crosh)が立ち上がるので、ここで以下のように入力するとsuになれるシェル(chronos)が起動できます(ここが一般向けモードと開発者向けモードの違い)。
$ shell
ひとまず、croutonのオプション表示を出すには以下のようにします。
$ sh ~/Downloads/crouton
動作原理を説明しておきますと、croutonで仮想化されたLinux上のX-Windowシステムの仮想ディスプレイ(※xiwiを経由して)となるのがcrouton integration拡張です。つまり、Chromeのウィンドウ内をディスプレイとして利用するために、ここまでの説明とこれから説明する手順を実施するわけです。
Debianのインストール
では、Debian wheezyとXfceデスクトップ環境を入れてみましょう(※Debianはjessieでもsidでもwheezy以降sidまでの好きなのを指定できます)。
$ sudo sh ~/Downloads/crouton -r wheezy -t keyboard,audio,xiwi,xfce-desktop
たぶん www.x.org で the certificate of 'www.x.org' is not trusted というエラーが出るので、
$ sudo vi /mnt/stateful_partition/crouton/chroots/wheezy/root/.wgetrc
……などとして、
check-certificate=off
……を追記しておきます。これでインストール時にサーバー証明書を無視するようになります。気を取り直してもう一度、
$ sudo sh ~/Downloads/crouton -u -r wheezy -t keyboard,audio,xiwi,xfce-desktop
……今度は -u オプションで既存環境をアップデートするよう指定します。
ものすごい時間がかかるし途中で何か失敗するときもありますが、地道にGoogle検索して解決しましょう。うまく行ったときは、Linux側のユーザー名を入力(新規作成)するプロンプトに移ります。ユーザー名とパスワードを指定すればインストール作業は完了です。
インストールが成功したら、以下のようにすると起動できます。
$ sudo startxfce4
あとは好きに環境設定しましょう。ぼくの場合はvimとDropboxがあればかなり楽できるので、日本語環境を作ってそれらを入れる感じです。
とはいえ、Chromeアプリの『StackEdit』がうまいことMarkdown対応とDropbox対応をしているので、Chrome OSでもふだんの原稿書きにはあまり困りません。どちらかというと『Firefox』を動かしてFirefoxbookにするとかそういう一発芸的用途のほうが大きいような気がしてきました。