2018年12月12日水曜日

NTT docomo/富士通 F-07Cへ今さらWindows 10 (1809)を入れた話

2020年1月14日をもってWindows 7のサポートが終了するということで、2011年7月23日に発売されたWindows 7搭載フィーチャーフォン『F-07C』のOSを今さらアップデートしたという話です。

同世代の、現代で言う“スマートフォン”は初代Galaxy SやBlackBerry Bold 9700、HTC Touch Pro、iPhone 4などであり、まだ各種OS魑魅魍魎の時代です。だからこそ本機のような、Symbian OSとWindows 7のハイブリッドといった機種が展開できていたおおらかな時代でもありました。

本機は『ドコモ コンセプトモデル』のシリーズとして発売され、厳密にはフィーチャーフォンでもスマートフォンでもありません。ただし、ベースはフィーチャーフォンなので、いわゆるiモードケータイです。そこにWindows PCが高密度実装されていて、切り替えが簡単にできる、というコンセプトなわけです。

メインストレージ(C:)の空き容量確保

Windows PCとして見た本機は、Atom Z600にメモリ1GB、ストレージ32GBという、PCとして最低ラインと言っても過言でない厳しいスペックです。

そのままではメインストレージ(23GB程度)の空き容量が足りないため、2年ライセンスがとっくに終了したOffice 2010や、すでにサポートの終了しているMicrosoft Security Essentialsなどをアンインストールした上で、『MiniTool Partition Wizard』でリカバリ領域にドライブレターを振り、リカバリデータをUSBメモリへバックアップし、データの一部(Windows 7リカバリ用データである \MyRecovery\Rec_32*.*)削除を行ってドライブのサイズを縮小し、メインストレージの容量を8GBほど広げました。

その上で、Windows 10 October 2018 Update (Version 1809)のインストール用USBメモリを『Media Creation Tool』で作成し、Windows 7上から Setup.exe を起動してアップグレードしました。

USBメモリを挿すための変換コネクタは、以前 ヤフオク! で購入した、F-07C自作工房さん設計のものです。純正クレードルは持っていません。

インストールの実際

F-07CのWindowsモードは、Atom Z600 (1.2GHz)を600MHzへダウンクロックした状態で実行されているため、『CrystalCPUID』でオーバークロックして利用するのがよく知られた一般的なTipsです。

ぼくの端末のオーバークロック設定は以下のとおりですが、個体によってはブルースクリーンになったりするので電圧の調整が必要になることがあります。

この状態でインストールを開始して、1段階目(最初の再起動まで)に1時間以上かかります。再起動されるとWindows 10のPEモードでの作業再開となるわけですが、この段階がかなりかかります(600MHzモードのため)。

全体で7~8時間くらい見ておく必要があって、ながら作業でやれる暇なときにやるのがいいと思います。

先にやっておけばよかった、(古い)GMA600ドライバのアンインストール

Windows 7時点でのGMA600ドライバのバージョンが 8.14.6.3077 か 8.14.6.3080 でないと、Windows 10へサインイン後の画面が真っ黒になって詰みます。この新しいバージョンは富士通/Dellのサイトにあるので拝借します。

先にやらなかった場合、画面が真っ黒の状態でWindows-Lキーを押すとロック画面を表示させられるので、右下の電源マークからShiftを押しながら 再起動 を選ぶ(お待ちください 表示までShiftを押しっぱなしにする)と、トラブルシューティング - 詳細オプションのスタートアップ設定からセーフモード(5キー)に飛べます。

ここで古いGMA600ドライバをアンインストールして、上記バージョンのドライバをインストールして回復させました。

手元の個体では 8.14.6.3077 のほうが調子がいいですが、3080でも問題ない人もいるみたいなので、様子を見ながら使い分けてください。

あと、これらのドライバだと急に画面が黒くなって凍ってしまう(ように見える)ときがあります。高負荷時に多いので、たぶん表示の同期処理に失敗しています。

そのときは本体横のほうのWindowsキーを長押しすると、Windowsモードを強制断してケータイモードに戻れます。または、画面のタイムアウト(消灯時間)まで待ってマウスなりキーボードなりの入力をすると画面が帰ってきます。タイムアウト1分とかに設定しましょう。

それから、タスクマネージャのスタートアップ設定などで、igfxTray, igfxext, hkcmdの3モジュールの起動を止めてはいけません。これらを無効化すると、起動時にデスクトップが表示されなくなります。

HSDPAモデムの設定

F-07CのWindows 8用のモデム設定ファイルは、以下URLで公開されています。Windows 10でも使えます。

  • https://www.nttdocomo.co.jp/support/utilization/application/foma/com_set/driver/concept_model/f07c/index.html
ドコモ コネクションマネージャについて

すでに公開が終了してしまっている『ドコモ コネクションマネージャ』に関しては、以下のURLで最終版がバージョン 4.3.3であることが確認できますが、残念ながらこのバージョンはWeb Archiveにキャッシュされていません。

  • http://web.archive.org/web/20130518105342/http://www.nttdocomo.co.jp/support/utilization/application/service/connection_manager/windows/download1/index.html

ファイル名 dcm_connect_mng_setup.exe を頼りに検索すると、バージョン 4.1.1が探し当てられました(本体内蔵版は4.0.5)。

  • http://web.archive.org/web/20110523201806/http://www.nttdocomo.co.jp/binary/exe/support/utilization/application/service/connection_manager/windows/download1/dcm_connect_mng_setup.exe

しかし、Windows 8対応版ですらないので、動作が怪しいです(FOMAを検出できない)。4.3.3なら行けそうなのでバイナリが欲しい……

HSDPA接続のマニュアル設定のやり方

仕方がないので、マニュアルでセットアップしましょう。設定の『ネットワークとインターネット』から、『ダイヤルアップ』を開きます。

『新しい接続を設定する』 - 『インターネットに接続します』でのダイヤルアップ設定を行います。ダイヤル先は以下のような書式になります。

  • *99***{NUM}#

ドコモ コネクションマネージャは {NUM} を 5 にしているようなので、5で行きましょう。

  • *99***5#

ユーザー名とパスワードは指定されたものを使います。ドコモのmopera UやSPモードの場合は空欄でいいのでそのままにします。LINEモバイルなら line@line と line ですね。

接続先を追加できたら、今度はWindows−Xキーのメニューから『デバイスマネージャ』を選択し、モデム欄にある『FOMA F07C』を右クリックしてプロパティを表示します。

『詳細設定』タブの『追加の初期化コマンド』として以下のような書式を入力すると、APN設定ができます。

  • AT+CGDCONT={NUM},"IP","{APN}"

この書式の、{NUM} と {APN} の部分を、適切な文字列で埋めます。{NUM} は先ほどの数字(5)に置き換えます。つまり、APNが mopera.net なら以下のようにします。

  • AT+CGDCONT=5,"IP","mopera.net"

これでダイヤルアップ接続すれば、HSDPAに繋がるはずです。この機種ではWi-Fiと3Gの接続は両立できないことになっていた気がしますが、少なくとも手元の端末は両方に繋がっています。

最低限のファイルをダウンロードしたいが……

必要なデータを集めるためにも、最低限度のアプリのダウンロードをしたいのですが、ひとつのWebページを開くのに5分とかかかるので、他のPCからダウンロードしようとしました。苦戦したのはDropboxとChrome Remote Desktop ホストでした。

Dropboxはそのままだと開いているPCのOS向けのものしか落とさせてくれないので、Chrome OSから以下のようなURLを類推してなんとか落としました。

  • https://www.dropbox.com/download?plat=win

しかし、これではインストーラ側でのダウンロードが完了せず正常にインストールできない(たぶん内部処理がタイムアウトしてしまう)ので、フル版を落とす必要がありました。フル版のダウンロードには、Chromeのデベロッパーツールで以下のようなUser-Agentに偽装させる必要があります。

  • Mozilla/5.0 (Windows NT 6.3; Trident/7.0; rv 11.0) like Gecko

UAをこうした上で、以下のURLからダウンロード可能です。

  • https://www.dropbox.com/downloading?type=full

Chrome Remote Desktop ホストはもうちょっと簡単で、検索すると以下のようなURLが出てきたので、それを落として実行しました。

  • https://dl.google.com/dl/edgedl/chrome-remote-desktop/chromeremotedesktophost.msi

こうして考えると、最近の“リッチなWeb体験”というのも難しいなと思いました。

総評: 最低限のWindows 7 PCをWindows 10へアップグレードさせるということ

ひとことで言えば、「買い換えろ」という感じの体験です。ぼくはこれを遊びでやってるのでよいですが、本当にPCがこれしかなくて……! という人がいるとすれば、それは本当に不幸なことだと思います。

クラウドで最低限のデータを同期して、テキストを入力するくらいのことはできます。しかし、Webブラウズとなるともうブラウズがままならないので、どうしようもないです。正直なところ、2〜3万のクソ安いChromebookのほうが数十倍快適だと思います。

Windows 7のサポート終了で、こういうアップグレードケースが多少なりとも出るとして、それはもう本当に厳しい状況だと思いますし、絶対的に買い替えたほうが体験の向上が得られると思うので、そういう施策がバンバン打たれるといいですね。

それはそれとして、F-07Cみたいな孤高の存在は後継機がないのが実情ですので、こういう変なガジェットがまた出てくると良いなと思いました。