2019年2月2日土曜日

Samsung Galaxy Tab S4 with Book Cover Keyboard

Galaxy Tab S4については、デジタルイラストに関するエントリですでに触れてしまっているのですが、純正オプションのキーボードが到着したので、改めてポストPC的な立ち位置でのレビューをお届けしたいと思います。

Book Cover Keyboardは、向かって左側にペンを収納するケースが付属しているのが特徴的です(※取り外し可能です)。このタブレットにとって、ペンはマストという強い意志が感じられます。

なお、S-PenはGalaxy Note9とは違ってBluetooth接続にはなっておらず、Galaxy Note8世代と同じWacom EMR方式のアクティブペンです。バッテリーの充電が不要なのでこちらのほうが便利ではあります。

Galaxyファミリには『DeX』と呼ばれるデスクトップUIがあるのですが、Book Cover Keyboardを接続すると自動的にDeXモードへ切り替わります(※設定で切り替えないようにすることも可能です)。何ができるのかというと、(全画面や分割画面でなく)ウィンドウモードでアプリを扱えるようになります。複数のアプリを立ち上げて協調作業させるときには非常に便利です。これまでは外部出力しないと使えない機能だったのですが、内蔵ディスプレイ上でできるようになったのが変化点。

通常時の分割画面によるマルチタスクは、縦画面では下側/横画面では右側がサブアプリ扱いで、自由に切り替えが効きます。こちらは、上/左側にメインのアプリを開いておいて、2~3アプリを切り替えながら使うのに便利です。

USBデバッグの設定とPCからの操作が必要ですが、LCD Densityを240くらいにするとChromeのWeb表示が基本的にデスクトップモードで動くようになるので、より使いやすくなります。

軽いスペック紹介

スクリーンが10.5インチ・2560x1440ピクセルのOLEDなので、そこらのフルHDなPCよりも画面を広く使うことができます。もちろんHDR10/DCI-P3対応で、Dolby Atmos対応のクアッドスピーカーとともにHDRコンテンツを表情豊かに再現することもできます。

外部入出力ポートももちろんPD対応かつUSB 3.1 Gen.1なUSB-Cなので、様々な周辺機器を接続することができ、まさにスーパータスキングな端末に仕上がっています。

認証周りには通常の顔認証に加えて赤外線式のIrisスキャナを搭載しており、虹彩認証が可能です。昨今のハイエンドノートPCと同じように、指紋認証は搭載していません。

プロセッサはSnapdragon 835なので現段階で2世代前のSoCではありますが、もはや日常用途には必要充分な速度を兼ね備えています。

ゲーミング向け機能の『Game Launcher』も用意されており、登録したゲームはオーバークロック状態で動作させたり、動作中の通知の鳴動制限を行うことができます。

惜しいところはグローバルモデルではメモリが4GBなところで、韓国モデルだけに6GBが用意されているという点でしょうか。区別なく全体で6GBならなおよかったですね。

ソフトウェア的なところでは、サードパーティのアプリとしてMicrosoft Office Mobileが初期導入されています。それ以外の(いわゆる)ブロートウェアはありません。

Galaxyでおなじみ、『Samsung Notes』は画面オフからのメモ取りにも対応していて、ノートとして地味に便利です。

Androidタブレットの中では最強と言って過言でない、多機能と利便性を誇るモンスターマシンです。

Samsung DeXはポストPCの夢を見るか

スマートフォンとタブレットの再発明以降、PCの活躍の場はどんどん片隅に追いやられていっていますが、DeXのようなデスクトップUIは果たしてその流れをさらに加速させるに充分な勢いを持っているでしょうか。

少なくともDeXに関しては、Officeが使え、フォトレタッチができ、豊富なテキストエディタやターミナル、ファイラなどを扱えるわけで、もはやWindowsやmacOSへ依存する必要を感じさせない仕上がりになっています。iOSより柔軟にファイルシステムを扱えるので、アプリの境界を越えた連携が取りやすいAndroidのメリットを活かしたUIです。

実際、DeXは非常に柔軟なユーザーインタフェースで、外部キーボードを接続すれば内蔵ディスプレイがその出力装置となり、外部モニタを接続すれば内蔵ディスプレイは入力装置となります。

どういうことかというと、外部モニタがあるとき、内蔵ディスプレイはキーボードになり、タッチパッドになり、またはグラフィックタブレットにもなります。大画面でプレゼンをするためだけではなく、実際にクリエイティブな作業に使えるよう設計されているわけです。

Galaxyは韓国企業の開発なので、多言語入力にもある程度は配慮されており、『Samsung Keyboard』というプリインストールのIME限定ではありますが、日本語と英語を切り替えながら入力することも可能です。『ATOK』のようなサードパーティIMEが使えないのは惜しいところですが、たいていのこの手のデスクトップUIは英語オンリーの設計であることが多く、日本語が入力できるのは大きなアドバンテージではあります。

ただし、これは日本語環境だからかもしれませんが、DeXと通常時の日/英切り替えキーが異なる点に注意が必要です。DeXのときは [Lang] キーで行けますが、通常時ではこれが [キーボード切替] キー(検索とAltに挟まれたキー)や Alt-Space キーになります。

さらには、通常時に分割画面を利用しているとステータスバーが隠れてしまい、DeXではステータス領域に現在のモードが表示されないので、現在の入力モードが把握しづらく、何文字か入力して消して、というのを行う必要があってちょっと面倒です。

また、いくつかのアプリではDeXと通常時でキーボードの挙動が変わったり(※たとえば『JotterPad』だと、DeXではカーソル上下キーが効かなくなるなど)と、まだ入力周りに細かな問題が多い印象を受けます。

Androidアプリをウィンドウ環境で動かす、という仕組み自体は珍しく、他に大々的にやっているのがChrome OSくらいしかないわけなので、そういう点ではもっと洗練されていけば他との差別化要因になってよいとは思いました。