2018年11月22日木曜日

Acer Chromebook Tab 10をおすすめできる奇特なあなたへ

Acer Chromebook Tab 10 (D651N-F14M)の国内販売開始という噂を受けて、盛り上がっているようで検索流入もそれなりにあるので、たぶん一般的な使い方をいっさいしていなくて、この端末をメインマシンとして使っている身として、ぼくがおすすめできる方々へのこの文章を書いています。

この文章は、 おふぃすかぶ.jp鈴木さん の文章を受けてのものでもあります。

あなたが必要としているのなら、この端末は必要なものです

もしあなたが、素敵なエクスペリエンスを持つPC-UNIX端末を探しているのであれば、間違いなくあなたはこの端末を持つべき人物です。

我々PC-UNIXユーザーは、数々のメーカーから突きつけられる困難な現実に立ち向かおうとしてきました。

Appleがその基盤として*BSDを採用したのもつかの間、今やブラックボックスと化した独自カーネルとGNU思想に汚染された、BSD/OSの文化を踏みにじる代物をOSとしてそのハードウェアにバンドルしているのはよく知られたことです。

Microsoftは、これまでも自社のソフトウェアとPC-UNIXとの互換を取ろうと懸命に努力してきています。現在のWindowsは今やSystem-Vと互換性を持ち、MS-DOSとの決別を図ろうとすらしています。そして、サービスとしてのソフトウェアを念頭に、完成度の高いWebアプリケーションによる自社サービスの実装を行っています。

ではインターネットの覇者、Googleはどうだったでしょうか。現実として、AndroidもChrome OSも、Linuxカーネルを基盤とし、独自のグラフィックシェルで独自のソフトウェアを実行しているに過ぎません。現状として、今はそれでもよいのです。Webブラウザとそのコンポーネントだけで、我々の生活の過半は成り立つようになってしまいました。

もし、あなたが単純なタブレット端末を求めるのであれば、それはAppleのiPadでありHuaweiのMediaPadでしょう。

この端末に興味を持ち、調べ、または体験して、それでもこの端末を欲するのであれば、あなたはこの端末を買うべきなのです。

この端末はただのタブレットではありません。データをクラウドに持ち、1日の大半をWebベースのアプリケーションで過ごすことができ、願わくばUNIXコマンドを理解するのであれば、あなたは最適なオーナーであるとも言えます。

お気に入りのBluetoothキーボードを探す必要はあるかも知れません。しかし、周辺機器として特段必要なものはそれだけです。

PC-UNIX端末としてのAcer Chromebook Tab 10

実情として、この端末はX11の上でGoogle Chromeベースのコンポーネントしか動かないxfceが動作していると言って過言ではありません。

あなたは(少なくともGUIで動くものは)アプリケーションを、Chromeアプリ・拡張機能、そしてAndroidエミュレーション・Linuxエミュレーションで実行されるもののいずれかから選ばねばなりません。

この意味を理解しない者は、そもそもこの端末を選ぶべきではありません。

我々はこの端末を通して、WindowsやmacOSと比較してストレス指数の高いトラックパッドの動作や、グラフィックAPIの非互換による描画の崩れ、ビットマップフォントの無理な拡大による盛大なジャギーなどから開放されます。

これらはすべて、Chrome/Chromiumプロジェクトの産物である、Blinkエンジンによる成果です。MozillaによるV8エンジンにも敬意を示すべきでしょう。我々がすべきことは、示したいものをただタップするだけです。

次にあなたがすべきことは、この端末を開発者モードにし、rootfsの認証を解除することです。

たったそれだけで、我々はUNIXがUNIXたる純然な『端末』を手にすることとなります。あなたの目の前にあるものはコンソール、データはすべてネットワークの向こう側です。

これは本来、UNIXでは当たり前だったことです。我々が扱うのは非力な端末、そこから処理するのは膨大な演算能力をサーバーに借りた種々のデータ。どうでしょう、基本に立ち返っただけのことなのです。

Chrome OSは幸い、伝統的なSMB/CIFSによるファイル共有に加え、DropboxやOneDriveのようなクラウドストレージを機能拡張によりマウントすることができます。fusefsによって実現されたこれらの持続的なマウントを、いずれのアプリケーションからもシームレスに扱うことが可能です。

どの画面からもctrl-alt-Tを押すことで、Chromeのタブとして開かれるターミナルに降りることができます。いくつか、昨今のOSとしては標準的な範囲の、サンドボックスによる制約はあります。その課せられたルールを理解し、それに則った運用さえ心がければ、あなたの目の前の端末は無限のUNIX資産を活かすことができます。

開かれた門戸はそこにあるということ

我々が日常としてインターネットを扱うようになり、もうすぐ四半世紀が過ぎようとしています。事実として、現在のChrome OSはGoogleに依存し、インターネットに依存した存在です。しかし、ただそれだけのことであり、インターネットは開かれた世界です。あなたの目指す門戸はそこにあります。

あなたはaarch64のアーキテクチャの壁に苦戦するかもしれません。あるいは使いたいアプリが最適化されておらず、動かないという壁にぶつかるかもしれません。

それでいいのです。この端末はそういうものであり、あなたはhackする自由を得ています。打開するためのヒントは常にインターネットに存在することでしょう。

我々とともに、開かれた世界に挑戦しませんか? Do it your own it.

なお、筆者の苦労の様子は以下のエントリ群をご覧ください。