グローバルでのローンチである3月8日よりも前になぜか香港で実機が入手できたので、今年最注目株ではないかと思われるSamsung期待の新作『Galaxy S10』をレビューしていきます。
念のためにお断りしておきますが、スポンサード記事ではありません。完全自腹です。
およそ3年ぶりとなるフルモデルチェンジとなったGalaxy S10ですが、大きな進化ポイントとしてはパンチホール型となったフロントカメラと、3眼へと進化したリアカメラがキーとなる部分ではないかと思います。大枠のデザイン的にはキープコンセプトで、エッジの丸まったディスプレイとアルミフレーム、バックガラスという構成は変わっていません。
世界の覇権を争うHuaweiにMate 20 Xでやられたことを、今度はGalaxy S10でやり返したという感がとても強く、特にカメラに関してはよくライバルを研究して作られているなと感じます。レンズの描写能力としてはほぼ互角、あとは写り味の好みの問題です。
また、スマートフォン大型化の時代にあっても本体サイズはほとんど前作と変わらず、最近のモデルとしては小ぶりな本体サイズも魅力的です。
前作で不格好だった指紋センサがディスプレイ内蔵の超音波式となって、非常にすっきりとした外見です。この超音波式の指紋センサはQualcommなどが推進している方式ですが、保護フィルムを貼った場合に作動させづらいという問題があるため、Galaxy S10ではあらかじめ専用の保護フィルムが貼付された状態で出荷されるようになりました。このフィルムは純正オプションとして販売される予定もあるようです。
また、ここもライバルを見習った点だと思うのですが、PC製のクリアハードケースが標準添付されるようになりました。Samsungはこれまでかたくなに別売の高付加価値ケースを売ってきたので、大きな姿勢転換です。もちろん、LEDバックビューカバーなどの高付加価値タイプのケースは別売されます。
LEDバックビューカバーのこと
LEDバックビューカバーは、背面にLEDが無数に内蔵されたバックケースで、白色LEDがキラキラと光る特徴的なケースです。中央上部には通知アイコンなどが表示できるよう、特に多くのLEDが内蔵されています(※Note9までのLEDビューカバーのような、通知を表示することは現状ではできません)。
ずっと光らせておくこともできますが、通常は画面を伏せたときに光るよう設定しておくものかなと。
日本でもおそらくは初の大型フラッグシップストアとなる『Galaxy Harajuku』のオープン(3/12)と前後してキャリアモデルの発表があるのではないかと思いますが、Galaxy Harajukuでは純正アクセサリも扱うとのことなので、今までより容易に買うことができるようになることでしょう。
ユーザーエクスペリエンスのこと
Galaxy S10では、従来のSamsung Experience UIを捨て去り、新しいOne UIというインタフェースに一新されました。よりシンプルでわかりやすい操作体系になったと思います。
Galaxy S8あたりからはロック画面の時計や天気などのウィジェットで独特の雰囲気がありましたが、そういう部分がより一般的なものに改められ、非常に実直な感じのインタフェースになっています。
本体のインタフェース周りは従来からの3.5mmオーディオジャックが残されており、USB-C Type 3.1 Gen.1も持っています。デュアルSIMモデルはSIM2スロットがmicroSDと兼用になっており、microSDを使う場合は事実上のシングルSIMとなります。このあたりもうちょっとどうにかなってほしかった。
ちょっと変わったのは電源ボタンが今までよりも上に移動したり、Bixbyボタンの挙動をカスタマイズすることができるようになったり(※これは居住国によってできる/できないがあります)といったところでしょうか。電源ボタンを親指の付け根で押してしまう誤爆事故が起こらなくなって、だいたいの人がオフにしたかったであろうBixbyボタンでの専用アシスタント起動がコントロールできるようになったのは改善点だと思います。なお、Bixbyボタンの挙動は現状では日本語圏においてはカスタマイズすること自体ができないようになっています(日本キャリアモデルの発売によって変わるのではないでしょうか)。
まだ正式な発売前ということもあって、Samsungのサービス自体も体制が整っておらず、例えば純正のオーディオプレイヤーである『Samsung Music』はそもそもAndroid 9対応版が出ていなかったり(※追記: 3/7に対応版がリリースされました)、先述のLEDカバーなどもまだほとんど何もカスタマイズできない状態です。
カメラ周りのこと
いつもの作例から行ってみましょうか。曇天・降雨と気象条件は悪いですが、定点です。
ピントの合う範囲や絵作りが、やはりMate 20 Pro/Xとよく似ています。
ズームの作例です。ここがうまいところで、Huaweiとは違って画角が〝2倍〟(52mm)です。実際、携帯電話のカメラで3倍は結構使いどころが難しいというか、そういうところをよく分かっています。
広角です。これは16mmなので画角はHuaweiと一緒。広角の際にレンズ歪みを補正するオプションもあるのですが、これは切った状態(デフォルト)での撮影です。
夜の作例です。ノイズ処理がうまいというか、暗部が潰れていないあたりが注目ポイントかと思います。ダイナミックレンジはHuaweiより広いように感じます。
カメラの使用感としては、〝カメラとしての〟操作体系を考えるとHuaweiのほうが一歩抜きん出ています。携帯電話のカメラとしては必要充分な機能がありますが、基本的にはオートで使うべきカメラで、マニュアル操作で細かいことをやるようにはできていません。
ただ、プロモードにするとマニュアル撮影ができ、S9/Note9世代より引き継いだ〝機械式絞り〟も使うことができます。これは絞りをF1.4/2.5へ機械的に切り替えられる、携帯電話では珍しい機構です。シャッタースピードなども自分で選べるようになっているので、絞った上で長時間露光、といった撮影も可能となっています。
惜しいのは手ぶれ補正で、OIS(光学式)/EIS(電子式)はありますが、ライバルのHuaweiと違ってAIS(AIの深層学習による補正)がありません。このためにズームや長時間露光時の手ぶれ補正の効きがいまいち、という感触を受けました。Huaweiは手持ちで月が撮れますがSamsungではできない、という感じです。HuaweiはAIのために専用のNPUを組み込んだSoCを使っていますが、Samsungはそういうことをしていないので、基本的には従来どおりのカメラを正統進化させただけに過ぎません。
静止画を何も考えずにシャッターボタンを押せばきれいな写真が撮れる、という意味ではiPhoneに近い感覚でそれを実現することができて、非常に優秀なカメラだと思います。じっくりと狙って美しいシーンを切り出す、という用途にはあとちょっとだけ足りていません。そういう方面ではHuaweiのほうが一歩抜きん出ています。ただ、目に映るもの〝以上〟を記録するという点においてはどちらも合格点以上のものであるので、S9/Note9時代の酷さを鑑みるとSamsungの開発部隊は非常によくやったという感はありますね。
総括
One UIは、まだこれから先に練り込まれていくのだろうという未成熟感があり、素っ気ないです。たぶん、その素っ気ない、日常に溶け込むようなインタフェースを目指しているのだと思いますが、今までのGalaxyユーザーからしてみれば突き放されたような乖離があるので、何か強固な哲学的なものを持っているのでしょう。
背面から前面へと移動した指紋センサは、超音波式ということで認識精度に不安もありましたが、実際に使っているとまったく支障はなく、認識率も認識速度も不足ないです。ガイドのほぼない、指を置く場所も2日もあれば慣れます。一般的な保護フィルムだと認識できなくなるようなので、アンチグレアがいいなあと思っているのですが、そこは難しいかもしれませんね。
パンチホールとなったフロントカメラは、実際に使っていると結構気になります。プレス向けのレンダリング画像で見るより大きいように感じるんですね。また、このためにステータスバーが大きくなっているので、それなりに無駄な空間が生じます。これならノッチでもよかったんじゃないかと正直思います。
追記: 『Energy Ring』というアプリを入れると、バッテリー残量のサークルがパンチホールの周囲に描画できるようになります。これが結構見ていて楽しいので、パンチホールじゃまだなという気持ちはわりと薄れました。
反面、リアカメラは本当に素晴らしく、もっとマニュアルでいじりたいという気持ちはありますが、オートのカメラとしてはこれからのリファレンスとなりそうな出来映えです。シーン認識がオートしかないのが、ちょっと不満な点ですね。手動で選びたい。
ダイナミックAMOLEDと銘打たれたディスプレイも、HDRコンテンツをうまく活かしきることができ、メリハリの効いた描写力はiPhoneやHuaweiには追いつけない調整力を感じます。さすがにパネルを作っているメーカーなだけはあります。記憶色を鮮明によみがえらせてくれる、素晴らしいディスプレイです。
そして、LEDバックビューカバーは見た目にも斬新で、ぱっと見は普通のケースなのに無数のLEDで派手に光るというギャップが面白い製品です。もっとカスタマイズができるようになれば、もっと楽しい製品になると思います。ぼくはとにかく通知で光らせたいですね。