2018年9月7日金曜日

BlackBerry KEY2 (BBF100-9) Black

BlackBerryが中国TCLのブランドになって一時は不安視もされましたが、着実に実直なデバイスを製造していて買収の成功事例という感じでした。 今回、日本の総合代理店であるFOXが最新機種の『KEY2』日本向けモデルを販売開始して、話題となっています。

KEY2はKDDIが『au +1 collection』の商品としても扱っており、日本向けモデルは日本のメガキャリアのバンド帯を網羅していて、気合が入っています。 日本向けラインアップは、ストレージ64GBでデュアルSIMのBBF100-8 (本体色シルバー)、ストレージ128GBでシングルSIMのBBF100-9 (本体色ブラック)の2種類があり、KDDIが扱うのは後者のモデルです。

一部量販店やネット販売でも扱いがあり、ぼくはこちらで128GBモデルを予約して買いました。Amazon.co.jpを使ったのですが、発売日の7日に出荷しやがるので8日に来ました。あほか。

買ったもの

本体より前にフィルムを買っていました。それとシンプルなバンパータイプのケースですね。

液晶保護フィルムは PDA工房さんの『Perfect Shield』 を買ったのですが、左右と下端がどうしても浮いてしまいます。PDA工房さんに相談したところ、「(そのままだとまた浮いてしまうので)お好きなサイズに切り詰めますよ」という温かいお言葉を頂いたので、3辺それぞれ0.8mmずつ切り詰めて作ってもらいました。ジャストフィットな感じです。

どうも旧来のBBF100-4などと比べると、ガラスの外周のアールが緩やかになっていて、それで旧来のモデルに合わせたフィルムだと浮いてしまうということのようです。

PDA工房さん、このたびはありがとうございました。

背面フィルムは RISE PRODUCTさんのTPU保護フィルム を買いました。こんな凸凹した背面でも吸着していてすごいと思います。

ただし、シリコン吸着タイプなので熱を持つと端から剥がれてきます。なので、3M社のダイノックフィルムのカーボンブラックを貼りました。

旧来のBlackBerryのような外見になってしまいました。縦に長いですが。

バンパーはまだ届いていないのでいずれ改めて。

iPhoneからの置き換え

ぼくはこれまで必ずiPhoneを持つ端末のひとつに入れていたのですが、この理由はアプリケーションの豊富さとサポートされるバンド帯の広さが主なものでした。 前者に関してはもうAndroidは充分カバーできており、後者だけがネックでした。日本向けモデルでは海外で不安が残り、海外向けモデルでは日本で不満が出る、といった具合です。

今回のKEY2は、サポートするバンド帯に関してはiPhoneに匹敵する豊富さで、ほぼほぼ困らないだろうというカバレッジです。以下に日本向けモデルのバンド帯を比較してみます。強調部が日本が利用するバンド帯(予定を含む)です。

機種バンド帯
Phone X (A1902)LTE: 1/2/3/4/5/7/8/11/12/13/17/18/19/20/21/25/26/28/29/30/34/38/39/40/41/42/66
3G: 850/900/AWS/1900/2100
KEY2 (JP)LTE: 1/2/3/4/5/7/8/12/13/17/18/19/20/26/28/32/38/39/40/41
3G: 800(VI)/800(XIX)/850/900/AWS/1900(II)/2100

iPhoneのほうが多いようにみえるのですが、iPhoneはまだ利用されていない(これからサービスが開始される予定の)バンド帯も含んでサポートしています。実際には利用されているバンド帯で大きな差はありません。 また、地域を日本に絞って手厚くサポートするiPhoneとは対象的に、KEY2は海外でもなんとかメインバンドをつかめるよう工夫されています。少なくともアジア圏では呼吸ができなくて死ぬということはなさそうです。

これらに加えて、BlackBerryやPalmなどのキーボード付きストレート端末を長年使ってきていて、KEY2のホットモックを触った感じでは充分それらを超える快適さを提供してくれるだろうと判断できました。

iPhoneを置き換えるに当たっての障壁はもうさほど高くはなく、AndroidというOSをどう受け入れるかの問題だけなのですが、KEY2にプリインストールされるAndroidはほぼPure Androidであり、AOSPに極めて近いものです。

ぼくはAndroidに抵抗がないので、Pure Google Experienceを提供してくれればそれでよいです。 また、毎月のセキュリティアップデートを提供するという公約があります。Googleが毎月実施しているこのセキュリティアップデートに関しては、これを常時享受できる環境は事実上Google純正のPixelくらいしか存在しておらず、それに極めて近い環境が用意されるのであれば、セキュリティ上の不安も払拭されます。

つまり、ぼくにとってはもう、常時iPhoneを持つ必要性はなくなったので、置き換えても良いだろうという判断ができました。

VoLTEについて

よく聞かれるのですが、ドコモ/ソフトバンク網におけるVoLTEには対応していません。現在のところはKDDI網のVoLTEにのみ対応しています。“仮想HD通話”という謎の概念が実装されていますが、これは音声コーデックで何かやってるだけじゃないかという気がします。

その代わりというのも違うのですが、KDDIの3G網(CDMA2000)には対応していません。VoLTE SIMが必要です。

KEY2のハードウェアに関して

Snapdragon 660なので、Android的にはミドルハイといった感じの製品となります。そこに6GBのメモリと64/128GBのストレージなので、ハイエンド寄りのミドルレンジといった感じですね。

今となってはかなり小型の部類に入る、4.5型IPSの1620x1080ピクセルという画面は、6インチ級で18~19:9の画面が一般的となった現代においては常に「小さい」という感想を覚えるでしょう。

一方、画面の小型化に“貢献”した物理キーボードは、キートップが大きく取られており、とてもタイプしやすいです。背面のラバーコーティングもタイプのしやすさに貢献しています。 その代わりに、記号類の一切はsymキーとのコンビネーションで入力することになるので、Blackberry配列に慣れていないうちは戸惑うと思います。また、句読点(や、日本語においては長音符)が独立したキーでないというのは各国のメディアが不満点として挙げています。

しかし、この配列は上の画像のように旧来のBlackBerry時代から頑なに守られてきた配列でもあり、古くからのユーザーであればとても馴染みのある配列です。過去の BlackBerry Classic Q20 に関するエントリ を見ても、右⇧キーがスピードキーに変わっただけということが分かります。

画面とキーボードのふたつを合わせた本体の大きさはだいたいiPhone Xくらいの筐体サイズで、実際には十分許容範囲のサイズ感になります。160gと軽めで、厚みも8.5mmと、キーボードの割に薄いです。 考え方としては、6インチ18:9画面の端末くらいの大きさだと思っておけばそれほど遠くありません。

バッテリーは、ちょっとオーバースペックなんじゃないのという3450mAh (実表記3500mAh)の大容量です。丸1日使って不安はまったくないです。これに関しては、実用域がどうというより、入るから入れたのでしょう。2日行けます。また、QC3.0対応なので、30分くらいで50%充電される感じで、電源に困ることはそうそうないです。

ハードウェア的には、ゲームをメインにしない・カメラをメインにしない、ということであれば何の問題もないと思います。

カメラに関して

カメラはトレンドのデュアルレンズで、片側が広角・もう一方が2倍の望遠という一般的な構成です。また、ソニーIMX全盛の今に珍しいSamsung製のセンサを搭載しています。

特に昼間や接写では威力を発揮するのですが、夜になるとどうしてこうなったのかまったくダメです。

ダイナミックレンジがさほど広くないこと、露出が甘いこと、そしてピントの合った範囲のわかりにくさが暗所撮影の性能の低さに影響していると思います。また、F値も2.0と昨今のスペック競争にはいささか置いていかれた感じの暗さです。あと、色味もあっさりしすぎている感じがありますね。ある程度はソフトウェアで改善できると思うので頑張ってほしい。

光学ズームには期待値が高かったのですが、ちょっとなんとも評価しづらい出来です。まず標準角。

そして、望遠側。

ちょっと退色したような色味で、画像も光学ズームなのか判断に困るくらい鮮明ではありません。最近の超解像ズーム(ソフトウェア処理)のほうがきれいかもしれません。

ぼくは年間に平均して3万枚くらいの写真を撮っているのですが、カメラの性能に関しては少なからず不満が残る結果となりました。なので、カメラ(DMC-CM1)を一緒に持ち歩きます。

カメラのシャッター音がうるさいという問題については、『無音モード』を使うといいと思います。はい。

便利なセキュリティ

なお、画面内のシャッターボタンでなく、スペースキーで写真を撮影すると、セキュリティロックのある隠しフォルダに保存してくれるようになっています。なにげにコンフィデンシャルな撮影物のときに便利です。プライベートとビジネスの撮影物を分ける、といったことにも使えるでしょう。 この振り分けは、『Locker』という標準アプリであとから実行することも可能です。

KEY2のソフトウェアに関して

ソフトウェアとして特殊なところはそうなくて、旧来のBlackBerryユーザーであれば「あ!これはBlackBerryだ!」と思うことでしょう。よく特徴を掴んでいます。しかし、とても素直なAndroidでもあるのでうまくミックスされていて、どちらのユーザーでも大丈夫です。

『BlackBerry Hub』アプリや『生産性』タブはまさに往年のそれで、小さな画面でいかに情報をまとめあげるかということに配慮された懐かしい画面です。何気にウィジェットもタブに置けるので、好きな情報を一元して管理できます。ぼくは音楽ウィジェットなどをここに突っ込んでいます。

そういえばapt-Xに対応しているのはいいのですが、apt-X対応機器が繋がっていると、通知領域にずっとapt-Xのロゴが出っぱなしになるのはちょっと嫌がらせっぽいです。

便利だと思うのは、画面を3本指で下スワイプすると瞬時に画面を隠してくれる『Privacy Shade』や、画面上の隠したい場所をマスクしてキャプチャ・共有できる『Redactor』などのプライバシー保護ツールです。とっさのときに役立ちます。 これらを便利キー(左側面いちばん下のキー)やスピードキー(右下の9点キー)のアクションに設定しておけば、画面の内容をSNSにシェアする際などにも有用でしょう。

日本語環境に関して

標準のBlackBerry Keyboardが、日本語環境だと悪さを結構するので無効にしたほうが良いようです。 漢字変換に関してはBlackBerryをターゲットに開発された、以下の『AquaMozc』が優れているように思いますが、『ATOK』もわりと頑張っていると思います(頑張ってほしい)。

AquaMozcはキーバインドが少々特殊になっています。ドキュメントによれば以下のような置き換えが効いています。

物理キー置き換え先
左⇧ctrl
sym
0
$-
alt+00
alt+$=
alt+l$
alt+⇧+I¥
ctrl+B
ctrl+N
ctrl+M
ctrl+$
alt+space日/英
space変換
enter部分確定
ctrl+enter全確定
alt単押し仮想キーボード表示切替
ctrl+UIOPアルファベットやカナなどへの変換
ctrl+K文節切り
ctrl+L文節切り直し→
←→選択文節の移動
ctrl+⇦再変換

これ以外に、キーボードのスワイプでカーソルキーと見なす機能も実装されているので、混乱してきたらスワイプしてみるといいと思います。

これはシステム側の問題ですが、altやsym, ⇧の状態がステータスバーに表示されていれば、と思うシーンがあります。キー固定になっていると混乱します。

日本語環境に関してはまだ未熟なので、市場がどれほど整うかというところがキーだと思います。

ストレート型QWERTYキーボード端末の完成形

非常に実直で、質実剛健な造りのQWERTY端末だと思います。ソフトウェア的な作り込みの甘さは残りますが、ポピュラーな機能を全て盛り込んだ上でこの大きさにまとめ上げているという素晴らしさは特筆すべき点です。QWERTY端末といえばでかくて重い、という路線を見事に崩してくれました。

KEY3に盛り込まれるべきフィーチャーとしてはもう、防水とか超狭額縁とかそういう細かなブラッシュアップでしかないように感じます。

このエントリは7割くらいをKEY2上の『JotterPad』で書いています。キーボードの秀逸さは何度でも繰り返しになりますが、このハードウェアの最も素晴らしいところだと思います。どことなくHP 200LXを思い起こさせる感触で、ああいった機器が順当に進化していればこうなったのだろうなと、思いを馳せました。