フルワイヤレスイヤホンの始祖『Earin』ですが、最近大型のアップデートがあって、だいぶ音づくりの方向性が変わりました。そこで、音の再評価をしてみようと思います。
Earin M-2の初期の音づくりはモコモコと籠もりがちで、どちらかというと閉塞感がありました。クラブミュージックには向くけどナローな女性ボーカルには弱い、というような音場感でした。この部分が割と不評だったようで、Earinでは幾度かのアップデートでこの方向性を改善しようとしてきています。この大型アップデートに向けては特に長期のBetaテストを行っていて、半年くらいかけて正規のアップデートとなった経緯があります。
今回のアップデートの大きな改善点としては、明確なダイナミックレンジの拡大があります。これによって特に低音に向いていた指向性が弱くなり、高域を聴かせる音づくりになったと言えます。これは、M-2発売当時と現在の、フルワイヤレスイヤホンの音場競争を取り巻く状況が変わったことも影響しているのでしょう。昨今は中高域まで鳴らしきるフルレンジが戦場の主役です。
apt-Xでの再生においては特にこの傾向が顕著で、今までの低域にフォーカスしていた音づくりから一変して高域を高らかに鳴らしきるように変わり、これなら女性ボーカルのバラードでも安心、といった感じです。逆に、低域が薄くなったのでイコライザで調整する必要性を感じたほどです。
バンドミュージックではこれまでベースの音がもっとも際だっていたのですが、ギターパートを主旋律に持ってきてくれるようになり、自然な音場感が得られるようになりました。メインパートで音がごちゃついた際、これまではハイハットの音などが消えがちでしたが、これをちゃんと拾うようになって、よりBAらしいキレのある音になったと思います。
オーディオトランスペアレンシー(外音取り込み)にも変化があります。これまではデジタルマイク特有の変調を感じる音声で若干のハウリングもありましたが、これがより自然な再生音に変わり、聴きたい音を明瞭に聞き取れるようになりました。これは、ライバルと目されるソニー WF-SP900のアンビエントサウンドに近くなった感じです。なお、M-2には取り込む音の距離をフォーカス変更できるアドバンテージもあります。
副次的効果として、本体のタップへの反応もよくなりました。これまでは動作がツーテンポくらい遅れていたのがワンテンポになった感じです。ワンタップから一瞬遅れて音楽再生が止まり、そこから数瞬の間を経てオーディオトランスペアレンシーへ切り替わっていたのが、再生停止からほどなく切り替わるようになって利便性が向上しています。
左右を取り違えた際の自動修正にも改善があって、わざと再生中に左右を入れ替えても自動的にチャンネルが切り替わるようになっています。これまでは再生中の場合はチャンネルが逆転したままになっていました。また、左右の切り替えもシームレスに行われるので、逆転チャンネルがスムーズに正常出力へ切り替わります。
全体的に、先駆者であるが故のこれまでの弱点を改善してきており、これからの展開にも期待の持てるアップデートだと思います。